昨年はエリザベス女王の在位60年を祝うバッキンガム宮殿前での記念コンサートやロンドン五輪の開会式で、いずれも主役級として駆り出されたマッカートニー。ロンドン市内で読売新聞など内外のメディアのインタビューに応じ、年齢を感じさせない生き生きしたジェスチャーや鼻歌を交えつつ新作の背景を語った。
「アーリー・デイズ」は「若い頃」の意味。アコースティックギターの弾き語りを基調に、ビートルズ時代の思い出を歌いあげた。
「ある日、曲を書いていたらリバプールにいるジョン(レノン)のことが頭に浮かんだんだ。ジョンと一緒に、レコード屋で自分たちの写真を手に入れ、古いロックを聴き、壁のポスターを眺めた。楽しかったすべての瞬間を思い出した。もう手に入らないからこそ記憶は美しい」と思い入れを語る。
「伝説」独り歩き 反感と誇り
ビートルズは伝説化して世界中の人々に語り継がれる。だが、「君たちはそれを見たのか? どこかで読みかじっただけじゃないのか? 私はリバプールにいて、その街を歩いていたんだ」と主張する。伝説が独り歩きすることへの反感と誇りとが相半ばするのかもしれない。
曲中で鍵となるフレーズは「何度、痛みを笑いに変えなければならなかったことか」という歌詞。「人生にはそういうことが頻繁にあった。皆、問題を笑いに変えて生きている」と英国流ユーモアを交えて解説するが、その一方で、「今は新しい女性と一緒にいて、私の人生では幸福な時期」とも明かした。
人生や時間、愛する人への感謝をテーマとする「アプリシエイト」、周囲への不信や反感から生まれる現状から脱皮したいという願望を歌った「ゲット・ミー・アウト・オブ・ヒア」など、年輪を経たセレブならではの曲も交えている。
11月には、ソロとして4度目となる来日公演に臨む予定だ。「現在のツアー公演メニューは気に入っている。ファンにはビートルズのナンバーを求める気持ちなど一定の期待感もある」。他方で「日本公演には新作を3~4曲交えたい」とも。「新作は演奏していて、とても気持ちが良いから」と意欲を高めていた。(ロンドン 林路郎)
2013年10月18日(金) by 樋渡啓祐氏(武雄市長)
古希を迎えた加藤茶が大変なことになっているらしい。ブランド好きの若妻を喜ばせるためにパチンコ店での営業に励み、異常猛暑下でバテバテになってたという。そんな話を聞いていたせいか、71歳のポール・マッカートニーが6年ぶり通算16作目となる新作「NEW」をリリース、さらに11年ぶりの来日ツアーが決まったとの知らせに「老骨に鞭を打っているのではないか」と心配になってしまった。
もちろん早合点だった。前妻の元モデルとの泥沼離婚で散在はしたが、2年前に迎えた新伴侶は資産家の娘。贅沢な生活を送るためにポールに過酷な労働を強いるはずはないとのことだ。ポール自身が米音楽誌のインタビューに「バック・トゥ・ザ・ビートルズ・アルバム」と語るなどリップサービスが多かったのも気にかかっていた。
安堵したところで新アルバムを鑑賞。アップテンポの「セイヴ・アス」が飛び込んでくる。ダンスホールなどでお爺ちゃんが小刻みなリズムで躍る様子は滑稽ですらあるが、ポールは断然格好いい。思えばリアルタイムでポールの新曲を初めて聴いたのは30年近く前の「ソー・バッド」だった。いい親父が少年のような裏声で歌うバラードに驚愕したものだ。年齢を超越した“化け物性”こそがポールの真骨頂であることを新作で再認識した。
アルバムは「愛こそすべて」「ペニーレイン」などビートルズ中期のサウンドを彷彿させる先行シングルの「NEW」を頂点にビートルズサウンドが展開する前半、2013年の新しい音楽を取り入れた後半とに分かれる。今回、4人のプロデューサーと組んだが、ビートルズを手掛けたジョージ・マーティンの息子、ジャイルズ・マーティンが往年から一番距離を置いた印象を受けるのが実に興味深い。
アルバム「NEW」(税込み2600円)は14日発売。来日公演は11月2日に大阪、15日に福岡、18、19、21日に東京の予定。詳しくは「日本公演公式サイト」で。
(c)iZa http://www.iza.ne.jp/kiji/entertainments/news/131014/ent13101417330002-n2.html
▲(C)2013MaryMcCartney
70年の初ソロアルバム『マッカートニー』から、ウイングスを含む現在までのポール・マッカートニーの活動の中で、まず聴くべき作品はどれとどれか。そう問われれば、本当は「全部」と答えたいところで、しかも時系列で聴いていただければ、ロックンロール史上最高の天才の一人が生んだ豊かな音楽的世界遺産をたっぷり楽しめるのだが。そんな時間もお金もないし、という方のために、駆け足でポール・マッカートニーの40年以上に及ぶ活動の中の見どころ聴きどころを紹介したいと思う。とはいえポールの全作品は現在アーカイヴス化が進行中で、旧カタログが一旦市場から消えているので、特に70~80年代の作品は手に入りにくいものも多数存在する。逆に言えば、聴ける作品が少ない今こそ、ポール・マッカートニー入門編に適した時期なのかもしれない。何事も、目覚めた時が適齢期なのだ。
まず70年代では、『ラム』『バンド・オン・ザ・ラン』の2作が手に入りやすい上、内容的も最高級の逸品であるのは間違いないところ。『ラム』はおそらくポールの全作品中最も「1曲ごとのバラエティが異常に豊か」なアルバムで、アイディアが多彩すぎてサウンド的に荒っぽい部分もあるが、ロックンロール、カントリー、ファンクやソウル、イギリスの伝統音楽のルーツなど、ポールの最大の特長である「何でもミクスチャーしてしまう」特性が良く出た傑作。そして『バンド・オン・ザ・ラン』は、ビートルズの面影を強く残すタイトル曲を筆頭に、緊張感あふれるバンドサウンド、心踊るメロディ、しっかりと練りこまれたアレンジが一体となった名曲がズラリと並んだウイングス最大のヒット作。今もライヴで演奏する曲が多数含まれているという意味でも、これを聴かねば始まらない代表作だ。そのほか、『ラム』に匹敵する超バラエティ娯楽作『ヴィーナス・アンド・マーズ』や、ウイングス後期のバンドの充実ぶりを示す『バック・トゥ・ジ・エッグ』など、ウイングスには佳作が多い。アーカイヴス化が進んだあかつきには、ぜひすべて手に入れていただきたいと思う。
ウイングスと共に過ごした70年代が終わると、ポールは再びソロへと回帰。80年代の代表作は『タッグ・オブ・ウォー』(スティーヴィー・ワンダーとのデュエット「エボニー・アンド・アイボリー」収録)が筆頭で、ビートルズを支えたジョージ・マーティンの緊張度の高いプロデュースのおかげもあり、1曲ごとのクオリティと充実度がハンパじゃなく高い。
ここで少々脱線すると、ポールはその天才ゆえの気まぐれか、時折気を抜いたようなラフな作品を出す癖があり、70年代の『ワイルド・ライフ』、80年代の『マッカートニーII』などがそれに当たる(それはそれで楽しめるのだが)。それゆえ「ご意見番」としてのプロデューサーの存在が大事なのだが、ジョージ・マーティンほどそれに適した人はいなかった。このコンビは次作『パイプス・オブ・ピース』でも引き継がれ、それからさらに30年が過ぎた今、最新作『NEW』にジョージの息子、ジャイルズ・マーティンがプロデューサーで参加していることを思うと、大河ドラマ級の長い物語に胸が熱くなる思いがする。
80年代の終わりには『フラワーズ・イン・ザ・ダート』という良質な作品もあったが、『タッグ・オブ・ウォー』と共にこちらも現在手に入りにくいため、先を急ごう。90年代の代表作は、何といっても『フレイミング・パイ』。この時期はちょうどビートルズの『アンソロジー』シリーズの作業を終えた頃で、そちらにも参加していたジェフ・リン(ELO)をプロデューサーに迎えた、シンプルなロックンロールと愛らしいポップスを収めた心ときめくアルバムだ。アルバムタイトルもビートルズ時代のエピソードに基づくもので、そう考えるとソロになってからのポールの傑作はすべて「ビートルズに回帰したもの」という言い方をしたくなるが、実際そうなのだろう。ジョン、ジョージ、リンゴはビートルズから離れることで自分の世界を作ったが、ビートルズが自分そのものだったポールは、その世界から離れることはできなかった。『フレイミング・パイ』も入手困難だが、ノスタルジーいっぱいのややレイドバック気味のロックサウンドと、ポール独特のジェントルで美しいメロディが詰まった名作だ。
と、ここまで来れば「偉大なるロック・レジェンド」として悠々自適、古いファンが喜ぶようなノスタルジックなサウンドを繰り返して、アルバムはのんびり5年に1枚ぐらい出して…と、なりそうなものだが、天才ポール・マッカートニーはそんな安易な道は選ばない。2000年代に突入し、60歳を超えてなおあくまでコンテンポラリーなロックにこだわり、未知なる冒険へと乗り出してゆくのだから、驚異的なアーティスト・パワーと言うほかはない。
2005年に発表した『裏庭の混沌と創造』は、レディオヘッドを手掛けたナイジェル・ゴドリッチをプロデューサーに起用し、すべての楽器をポール一人で演奏してコンピューターでエディットする、きわめて21世紀的な制作方法にトライ。楽曲そのものはポールの王道的ものが多いが、DTM的な質感のあるクールでエッジの立った音が独特で、そこはかとなく漂うサイケデリックなムードもいとおかし、やはり「ビートルズ的な何か」を感じ取ることができる逸品。そういえばジャケット写真のポールは1962年の姿だそうで、やっぱりそういうことなのか。その2年後、生々しいバンドの質感にちょっと逆戻りした『追憶の彼方に』をリリース(それはそれで楽しめるのだが)。さらにスタンダード曲のカヴァー『キス・オン・ザ・ボトム』で一息ついたあと、ついに完成したのが最新作『NEW』というわけだ。ようやくここまでたどり着いた。
結論から言うと、これは『裏庭の混沌と創造』のコンテンポラリーなロックへの挑戦をさらに大胆に推し進め、その上でバック・トゥ・ザ・ビートルズ的なずっと変わらぬ要素もしっかりと感じ取れる、驚くべき作品だ。まず1曲目の『セイヴ・アス』。こんなにヘヴィでダークでパワフルなロックナンバーを冒頭に据えたのは、過去のソロ作では一度もなかった。その後に続く曲も、リズムは非常にヘヴィでタイトなものが多く、しかも生のリズムと打ち込みのそれが分かちがたく結び合わされている。軽やかなアコースティック・ギターが鳴り響く「オン・マイ・ウェイ・トゥ・ワーク」に突如として刺々しいエレクトリリック・ギターが飛び込んできたり、警報のような電子音や緊張感の高い打ち込みのリズムが響いたり。どことなく「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のサイケデリック感を思い出す「クイーニー・アイ」にもエレクトロニックな加工音がふんだんに使われ、リード曲「NEW」ののどかで明るいシャッフルのリズムも、硬質な音作りゆえまったくノスタルジックには聴こえない。
その他、ストレートなロックンロール、英国的なトラッド・フォークソング、アコースティック・ギターが奏でるシンプルなポップ・チューン、単純なリズムマシンのビートに乗せたミニマルなダンス・ナンバーなど、様々な曲調が並んでいるが、生楽器とエレクトロニクスの融合がどの曲も非常に刺激的。ポールの歌はさすがに70代だな…というところもあるし、珠玉のメロディがふんだんに聴けるポップなアルバムか?というと、そういうものとも少し違う。だが全編を貫く緊張感の高さ、実験的なものへの飽くなき挑戦、今までにない景色を見たいというポールの執念のようなものが音の隅々から立ち上る、これはやはり「ビートルズに回帰した」一連のソロの傑作に連なる作品だと言っていい。
そもそもビートルズが体現してきた「60′sスピリット」というものがあったとすれば、それは飽くなき挑戦と実験、冒険だったはずだ。ポールの体の中には今もそのスピリットが根付いていて、71歳になってもこんなにとんでもなく刺激的な意欲作を作ってしまう。音楽に好き嫌いはあるだろう。だがこの『NEW』に溢れるみずみずしいスピリットを否定することは、誰にもできないはずだ。ポール・マッカートニーはまた一つ、偉大なる音楽的世界遺産の中に新たな1ページを書き加えた。
文●宮本英夫
こちらに、アルバム「New」の最新情報のリストアップと、それぞれのリンクを掲載しています。
2013年11月2日(土)
ポール・マッカートニー「Queenie Eye」のPV、日本語字幕付きメイキング映像が公開
2013年10月25日(金)
ポール・マッカートニー、曲があり過ぎて、更なる新曲はしばらく書けないと語る
ジョニー・デップ&ケイト・モスが破局後初共演 ポール・マッカートニー新曲MVで
Laura Bailey (ローラ・ベイリー) 、Paul McCartney (ポール・マッカートニー) の撮影現場を語る
2013年10月24日(木)
ポール・マッカートニーの新作「NEW」、米ビルボード200アルバムチャートで初登場3位
2013年10月23日(水)
ポール・マッカートニー 新作リリースで洋楽チャート席巻、Billboard JAPAN洋楽チャート首位、チャート史上初となる計5曲がトップ20入り
ポール・マッカートニー「Queenie Eye」のミュージック・ビデオ、6分半のメイキング映像が先行公開
ポール・マッカートニー、31年4ヶ月ぶりにアルバムがオリコンチャートでTOP3入り
2013年10月21日(月)
ポール・マッカートニーの6年ぶり最新作、英チャートで初登場1位逃す
2013年10月15日(火)
ジョニー・デップ、元恋人ケイト・モスとポール・マッカートニーの新曲「Queenie Eye」PVで共演
2013年10月14日(月)
【インタビュー】ポール・マッカートニー、最新アルバム『NEW』インタビュー 2013年10月3日@ロンドン
2013年10月13日(日)
【最速レビュー】ポール・マッカートニー、刺激的でありみずみずしいスピリットに溢れた意欲作『NEW』
2013年10月10日(木)
ポール・マッカートニーのニュー・アルバム「NEW」収録全曲の試聴が開始
2013年10月9日(水)
ポール・マッカートニーが、Bang & Olufsen主催「The Living Room Tour」でもファンからの質問を受け付け
ポール・マッカートニー、米TV番組「Late Night With Jimmy Fallon」に出演し、新作『NEW』からの新曲を含む3曲のライヴを披露
ポール・マッカートニーの新曲「Queenie Eye」がネットに
2013年10月7日(月)
ユニバーサルミュージックの公式サイトにて、「そうだったのか!ポール・マッカートニー」が開始
ポール・マッカートニーのニューアルバム「NEW」のリスニングイベントが、ロスとニューヨークで開催
2013年9月30日(月)
ポール・マッカートニーの新曲「New」のビデオ(歌詞・日本語訳付)が公開
『くもりときどきミートボール2』全米首位スタート。ポール・マッカートニーの新曲を含む特別動画も公開
2013年9月26日(木)
2013年9月24日(火)
ニューアルバム「NEW」のミュージック・ビデオに、ショーン・ペンとブラッド・ピットが参加
2013年9月21日(土)
2013年9月16日(月)
Youtubeのポール・マッカートニー公式アカウントで、新曲「New」の歌詞付きビデオが公開されました。
ポールがIntergramのアカウントで「New」の写真を募集中です。ハッシュタグ#whatsnewpaulの投稿で参加可能です。
2013年9月13日(金)
Youtubeのポール・マッカートニー公式アカウントで、新曲「New」の即興パフォーマンス映像が公開されました。
2013年9月11日(水)
新曲「New」が、12月28日から公開のアニメ映画『くもりときどきミートボール 2』の挿入歌に決定しました。
また、新曲「New」が、Billboard JAPAN洋楽チャートで堂々の1位に輝きました。
2013年9月7日(土)
2013年9月4日(水)
Youtubeのポール・マッカートニー公式アカウントで、新曲「New」のティーザー映像が公開されました。
また、国内でも新曲「New」のiTunesでの販売が開始されました。
2013年8月31日(土)
国内発売元のユニバーサルミュージックで、新曲の感想募集のキャンペーンが始まりました。
2013年8月30日(金)
国内発売元のユニバーサルミュージックのサイトで、新曲「New」の歌詞と対訳が公開されました。
2013年8月29日(木)
2013年8月29日13時1分、国内でも各マスメディアで、ポール・マッカートニーのニュー・アルバムの発表が解禁されました。
同時に、ニューアルバムからの新曲「New」の音源がYoutubeで公開されました。
以下は、各マスメディアで発表されたニュースへのリンク集です。
(c)Jash http://pmccartney.com
※新しい順に並べています。
2013年10月24日、セカンド・シングル「Queenie Eye」のプロモーションビデオが公開されました。
2013年10月22日、イギリスBBCの人気番組「Later On Jool Holland」に出演し、「Get Back」「New」を披露しました。以下は「New」。
2013年10月23日、アルバムからのセカンドシングル「Queenie Eye」のプロモーションビデオのティーザー映像(ネタばらし映像)、トレーラー映像(予告編)が公開されました。
以下はPVのトレーラー映像
2013年10月22日、9月のハリウッドでのゲリラライブ(テレビ番組「Jimmy Kemmel Live」の企画)から、「Save Us」がポール・マッカートニー公式Youtubeアカウントにて公開されました。
2013年10月16日、ロンドンのメイダベイルで行われたBBCラジオ6のライブ企画に出演、新譜からは「Save Us」を演奏しました。
2013年10月8日、アメリカの番組「Late Night with Jimmy Fallon」に出演し、新曲「New」「Save Us」の2曲をライブ披露しました。
新曲「New」の日本語訳ビデオが公開されました。既に公開されている歌詞付きビデオ(Lyric Video)に日本語訳を付加したものです。
2013年9月24日、ロサンゼルスでのフリーコンサートでも新曲「New」が演奏されました。
2013年9月21日ラスベガスのコンサートでは、アルバムの発売に先駆けて、ニュー・アルバムから3曲をライブで披露しました。
「New」
「Save Us」
「Everybody Out There」
「New」 lyric video
「New」の歌詞付きビデオです。今年のツアー「Out There Tour」の映像がふんだんに使われています。
「New」 Impromptu Acoustic Performance
上の映像の完全版といったところでしょうか。ツアーの舞台裏でバンドメンバーと「New」コーラス部分の練習をしているように取れます。
「NEW」 teaser映像(予告編)
エンディングのコーラス部分に、ツアーのバックバンドメンバー
が参加しています。ドラムのエイブは、この曲のレコーディングのコーラス部分にも参加したと語っています。
「New」
2013年8月29日に公開された新曲の音源。絵は固定で、ニュー・アルバムのジャケットと思われます。
(c)Jash
「楽曲の性格が多種多様だね。もともとは試しに1曲を異なるプロデューサーで制作してみて、誰が今回のアルバムに向いているかを判断するつもりだったんだけど、結局みんな気に入ったので数曲ずつ全員と仕事をすることにしたんだ。みんな個性が素晴らしいし、全員アプローチが違うからね。」(ポール・マッカートニー)
新アルバムのタイトルは「NEW」、新しい曲、新しい試み、新しい姿勢、新しい演奏方法、すべてが新しいんだよ。
皆に気に入ってもらえたらと思う。曲や、僕の歌い方や、演奏など気に入ってもらえたらいいね。そして聴いた人に喜びをもたらせるようなアルバムであると望んでいるよ。それが実現したら嬉しいね。
6年かかった理由は、途中で他のプロジェクトをやったからだ。いろいろなオファーがくるからね。良いオファーならイエスと言う。面白いと思えばすぐに引き受ける。例えば、「ニューヨーク・シティ・バレエのために曲を書いてもらえますか?」と言われた時、イエス!だった。やりたかった。時間もかかった。また以前から父親の世代が愛したスタンダートを録音するということも考えていた。子どものころに聴いて育った曲の数々。特別な愛着があるんだ。父親との思い出、子供のころの思い出。僕にとって特別、あの頃が甦ってくる。それをアルバム『キス・オン・ザ・ボトム』でやった。それにも時間がかかった。ツアーもやったし。その間にちょっと時間ができたので、今が新作アルバムをやる時かなと思ったんだ。
最初は、4人のプロデューサーを起用した場合どんなことがを可能か知りたくて、試しにスタジオに入ろうと思ったんだ。一緒にやってみて彼らの作業ぶりをみたとき、4人とも凄く面白いと感じたんだよ。それぞれ異なる理由でね。ポール・エプワースは実験するのがすごく好きで、スタジオに行くとアイデアがすでにあって、それを試してみる。マーク・ロンソンは、僕の曲をベターなサウンドにしたり、ベターなパフォーマンスを引き出しながらやった。イーサン・ジョンズとはとても自然体で歌いそのまま録音した。心配になって、「あれでいいのかい。ヴォーカルは大丈夫?」ってきくと「完璧だ」って。ジャイルズ・マーティンの場合は、何度もテイクをやって曲を完成させていく。4人とも一緒にレコーディングするのが楽しかった。それでそのまま4人全員を起用することになったんだよ。
僕にとってNEWには沢山の意味がある。孫がいるが、彼らのいう事すべてが新しいんだ。子どもの言うことには毎回驚かされるばかりだよ。また、10歳の娘がいるんだけど、彼女の言うことも何もかもが新しい。先日も「パパ、アルバムのタイトルのNとEとWにはそれぞれ終止符を入れるべきよ」って言われたんだ。それで「なぜだい?」ってきいたんだ。そうしたら、「終止符をいれたら、これは何の短縮形か?」って質問されるからだよって。それで僕は「では“N.E.W”は何の短縮形なのかい?」と尋ねたんだ。そうしたら娘は「Numerous Epic Words(数多くの広大な言葉)!」だって。びっくりしたね。まさに新しい驚きだったよ。(ポール・マッカートニー)
「大げさなものじゃなかったよ。“スタジオに入って何日かやってみよう。音楽プレイして楽しんで、どんなものが出来るか見てみよう”って感じだった」「彼が最初に言ったのは、“どうしたい?”ってことだった。僕は“ドラム・マシーンでパーカッション・ループを作ってみよう”って答えた。彼は“いいね! そうしよう!”って、“ノー”なんてことは一度も言わなかったと思うよ。これって、彼がどんなアーティストなのか象徴してる。彼はいつも、新しいことを試したいって思っているんだ」
「マイクを何本か立てて、4時間くらいのうちにものすごくいいトラックができちゃったんだよ。確か、最初のテイクと2回目の間に編集をしてみたんだけど。とんでもない雰囲気のよさがあって、なんかいろいろ喚起される音で、歌詞も面白くて、パフォーマンスも素晴らしかったんだ。それからちょっと実験を始めて、ぼくがいろいろサイケデリックな効果を入れてみたんだよ。一緒にやってて楽しいんだ。『あれもやったら? これもやったら?』って一緒にいるだけでインスピレーションを受けまくるんだよ」「ポールがベースのシールドをアンプに差し込んで、アンプの前にマイクを設置して、コントロール室に戻ってフェイダーの音量を上げると(あのポールのベースの音が)そのまますぐにスピーカーから出てきたんだよ。僕が手を加える必要はまるでなかったんだ! 僕にとってこれは最大の発見の一つだったね。やっぱり人はエフェクターとか機材とかにものすごくこだわりがちで、確かにそういうものも重要なんだけど、でも究極的に言うと、『リヴォルヴァー』のベースのサウンドはただのポールなんだよね。ポールになにを弾かせたとしても、ポールはポールのあの音を出してくるんだよ」(イーサン・ジョンズ)
「彼から依頼の電話があったんだけど、ちょうど僕自身の結婚式の週末だったから、完全に上の空だったんだ。他のことで頭がいっぱいだったんだよ。自分の結婚式とかね」
「それから10日後、ハネムーンの最中に、“ヤバい!ポール・マッカートニーに電話するのを忘れてた!”って思い出したんだ。それって、かなりバカげた発言に聞こえるよね」「いつか一緒に仕事をしたいという思いを、僕は潜在的に彼の頭に植え付けていたんだんだと思う。彼もそのアイデアに関心を持ってくれたんじゃないかな」「それから数ヶ月後、彼から電話があって、“ヘイ、スタジオに来てみないか?”って言われたんだよ」
「一瞬で名曲と分かるような曲だったんだ。“ぜひあなたとこの曲を手掛けさせてほしい”って言ったよ。そんな感じで始まって…それはクソ素晴らしい曲を作るまでの過程を学ぶことのできる、マスタークラスのようだった。彼の頭がどのように回転するかを見ているだけでね」「彼がいまだにあんなにもインスパイアされているということに、間違いなく驚かされたよ。スタジオに居る間ずっとアイデアにあふれていて、すごく刺激を受けた」
「ポールはあらゆるタイプの音楽を作ってきた…。だから、新曲を画期的といえるかどうかわからない。でも、素晴らしい曲だ。僕はただ、彼が探しているサウンドを加えようとしただけだ」「(マッカートニーとのコラボは)ハーモニーやサウンドのレイヤー、アレンジメントといったプロダクションのマスター・クラスを受けたようなもの。彼のアイディアはスゴイよ」(マーク・ロンソン)
「いっつもこれには悩まされるんだよね。事実としては、いつだって内情を知っている人はほんとに限られた人たちだけで、他の人たちがいろいろ分析をしたがるということで、それは別に問題ないんだよ。だけど、まるで見当違いなことを言われても、それとずっと付き合っていかなきゃならないということがあるんだよね。この間も言われてこれには恐れおののいたんだけど、こういうことだったんだよね。『要するにジョンが賢いやつで、あなたがかわいいやつで、リンゴがおかしなやつで、ジョージなスピリチュアルなやつだったってことよね』ってね。それでぼくは(深いため息をついて)『うーん、そういうことなんだよね、まさに』って答えるしかなくて。
「サムが『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』の脚本を持ってぼくん家に遊びに来たことがあって、あれこれ話し込むことになったんだよね。それで『いいね、ちょっとその映画の話を聞かせてよ』ってけしかけたら、ジョンが残忍で意地の悪い云々ってことになってて、『ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!』みたいな。『ぼくがみてきたジョンはそんなやつじゃないよ! この脚本を書いたやつは現場にいなかったんだから、これは伝説と伝聞にしかもとづいてないってことだよ……』などなどと言ったんだけどね。
あるいは映画の中でジョンとジョンの友達たちはバスの天井に飛び乗ったりするんだけど、ぼくたちはそんなことしたことないんだよ。するとサムは『でも、シーンとしては最高だからさ』と言うんだよね。だから、もうこう言わざるを得なかったよ。『あのさ、サム、こういうことで合意しよう。これは映画であって、実際の人生とはまるで違う、ただの映画だと。これは現実ではなくて、現実について扱った映画だ』とね」(ポール・マッカートニー、「Early Days」について)